令和4年10月8日にスポーツトレーナーの中野 崇氏をお招きし、スポーツの身体操作理論についてご講演いただきました。
中野氏はサッカー、野球など多岐にわたる競技のトップアスリートのトレーニングを指導されています。「⽇本⼈には⽇本⼈に適したトレーニングがある」として、物理学を根底としたトレーニング理論を提唱。2013年よりJARTAを設立し選手のパフォーマンスアップに影響しうる各競技の特性に合わせた身体操作のトレーニングシステムの構築、より良いアスレチックトレーナーの育成をおこなっています。
2部編成で、第一部は姿勢について我々が実際にトレーニングを受ける形式の講演、第二部は身体操作の考え方についての講演をおこなっていただきました。
第一部は全ての動作の根本と言える姿勢についてご指導いただきました。
日常診療ではただ漫然と患者さんに「姿勢良く立たないとね」などと言っていることが多く、じゃあ実際にどうすればいいのかという指導はなかなかできていませんでした。
何をもって良い姿勢というのか、という前提のお話から、実際のトレーニング方法についてまで説明していただきました。参加した医師たちも自分達でトレーニングをおこなってみて姿勢が改善するのを実感しました。
悪い姿勢は脊椎のみならず股関節、膝、肩、肘など多くの関節に悪影響を及ぼします。
罹患した関節のみならず普段からこういったことを理解し患者さんに指導することで悪化を防ぐことにつながるので今後も姿勢についての介入は全ての整形外科医が導入すべきだと思いました。
第二部ではスポーツトレーナーの考え方や視点、医師との連携についてご講義いただきました。走る、飛ぶなど同様の動作でも中野氏の考える“競技特性“を念頭に置くと、競技によって必要とされる身体操作は全く異なってくるというお話は、目から鱗のようで非常にためになりました。
我々医師は損傷した組織を診ることを職業としています。しかし動作、特性までを含めるとそこまで診られる医師はごくわずかであると思います。逆にトレーナーが組織の損傷具合などを判断するのは難しいことも多いでしょう。こういったことに気づき、お互いの職域を相互に理解することで、より良い医療を提供することにつながると感じられました。
自分が以前からお話を聞きたいと思っていた先生の講義を目の前で聞くことができ、感激でした。若手医師も多く参加してくれて、非常に実りの多い会であったと思います。また後日、より深掘りした内容で講義を受けたいと思いました。
このような機会を作っていただいた川端先生、中野先生、故今井先生に感謝いたします。
中野氏のH P上にも今回の講義について掲載していただきました!
横浜市立大学附属病院 整形外科 片山 裕貴