ー Research ー
研究活動
日進月歩の臨床を支える絶え間ない地道な研究。また大学という教育の場として、学生の知的好奇心に答える興味深い研究。私たちにとって研究は必要不可欠なものと考えます。
リサーチマインドを大切に
臨床の場面においてさまざまな疾患、個々の症例に向き合い、その病態を深く突き詰めると何かしらの疑問や探究心が湧き上がります。これがいわゆるリサーチマインドであり、私たちが大切にしているものの一つです。多くの研究がこの原点からスタートし、やがて臨床と研究がリンクすることによって、それぞれがより磨かれ、理想的な形へと発展するものと考えています。
このリサーチマインドを常に持ちながら、私たちはそれぞれの領域ごとの研究グループに分かれ、臨床研究、基礎研究を行っています。
臨床研究
臨床研究は各クリニックを中心とし、豊富なデータに基づき臨床により直接的に関わる研究に積極的に取り組んでいます。特に膝関節グループでは変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術に関する研究を長年にわたって継続しており、世界的にも有数の臨床データを蓄積しています。長年にわたる研究の結果、術式のさまざまな工夫や術後早期荷重を実現するなど多くの成果を上げてきました。
股関節グループでは人工股関節置換術に関してコンピューターナビゲーションシステムの臨床応用に関する研究、インプラント周囲の骨密度変化や有限要素法を用いた力学的解析、術前術後の深部静脈血栓症の診断と予防に関する研究など多方面からのアプローチで多くの研究成果を上げています。最近では感染症に対する新しい迅速診断法の臨床応用に取り組んでいます。画像診断では放射線科の協力のもと、18F-fluoride PETという画像検査を骨関節疾患にいち早く臨床応用しその有用性を数多く報告し、世界的にも先進的な研究を行っています。脊椎領域では側弯症発生のメカニズム、腰痛と上殿皮神経の関連、転移性脊椎腫瘍の予後に関する研究や脊椎、脊髄疾患における新しいMRI診断など多岐にわたる研究を行っています。腫瘍グループでは炎症性骨軟部肉腫のサイトカインの測定や、FDG-PETを用いて抗癌剤対する早期感受性の評価を行っており、いずれの研究も治療効果の評価を行うことで臨床にフィードバックできる研究を行っています。
このように各クリニックの研究グループが中心となり、最先端の研究を行い国内はもとより海外学会、英文雑誌における発表を目標として活動しています。
基礎研究
基礎研究グループでは、より根本的な病態の解明や治療の糸口を掴むため、細胞や動物を使った研究を、長年にわたって行ってきています。
現在は、Wntシグナル伝達経路の制御が軟骨分化に及ぼす影響を調べる研究と、スポーツ整形外科を中心に保存治療の選択肢の一つとなっているPRP(Platelet Rich Plasma:多血小板血漿)治療について、そのメカニズムを解明するための細胞を使った研究を行っています。
基礎研究というと地味で辛いイメージもあるかもしれませんが、経験豊富で明るい実験助手さんや、毎年3か月間研修に来る学生さんと一緒に、和気あいあいと研究しています。研究グループのチーフは膝グループとリウマチグループのチーフである熊谷先生が担当されていますが、他のグループからも集まっていて、分野を超えた意見交換ができる環境にあります。また、整形外科の基礎研究分野は、国際学会や論文発表もしやすく、留学にも繋がりやすい分野でもあります。
どんな研究にしても、臨床にリンクさせ、フィードバックすることを目的に行なっています。整形外科臨床で直面している疑問を解決し、またより良い治療に繋げるため、一歩一歩積み上げていきたいと考えています。